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宮流神楽の太鼓の打ち方

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 はじめに

熱田神楽(熱田・笠寺などのサイメ系)では、太鼓はどこをどう打つかきちんと決まっていて、勝手に変えてはいけないことになっています。しかし、宮流神楽(知立・亀崎などのカンタロウ系)の地域では、リズムやアクセントの基本的な部分さえ合っていれば、自由な打ち方をしても良いことになっており、そこが面白いところでもあります。

しかし、宮流神楽の基本的なリズム、特にアクセントを理解せずにアドリブを入れると、笛と合わなくなってしまいますし、初心者にはどうやって練習すればよいのか分かりにくいです。そこで、宮流神楽の基本的なリズムと、私なりに考えたパターンの練習方法などを書いてみました。

なお、◎は大太鼓、Xは締太鼓の強打、vはスカシ(バチが締太鼓の太鼓面に少し触るだけの弱い打ち方)。RとLは右手・左手です。


 宮流神楽の基本リズム



基本的には、上記のようなリズムになっています。熱田神楽には六つ打ちという言葉があるように、感覚的には以下のような分け方でとらえている人もあります。ただ、私は、基本的に大太鼓が最初に来る4拍子と考えています。



ただ、このアクセント部分だけを打って練習しようとすると、裏拍(小節の偶数拍目)のリズムがつっこんでしまって、かえってリズムがとりにくいので、スカシを少し入れた・が良いと思います。スカシとは、バチが締太鼓の太鼓面に少し触るだけの弱い打ち方のことですが、これを強く打ってしまうと、リズム感がおかしくなってしまいますので、くれぐれも注意してください。



まず、この基本リズムを習得しましょう。あとは、最後の譜例を見て、笛との関係を研究して下さい。

練習方法ですが、あぐらをかくか、椅子に腰掛けて少し足を左右に広げ、右足の大腿部を締太鼓、左足の大腿部を大太鼓に見立てます。両手を上のR(右手)とL(左手)を参考にしながら、大腿部をポンポンと指全体で打ってゆきます。御神前の音源を聞きながら自分でやってみて下さい。


 人前で打つレベルの基本パターン

上記の宮流神楽の基本リズムでも、十分に人前でやっても恥ずかしくないのですが、それを習得したら、もう少し複雑な方法も練習しましょう。
上記の基本リズムパターンで、休符になっている部分に「小さなスカシ2個ずつ」を入れたものです。ただ、スカシはほとんど音が聞こえないぐらいのつもりでないと、リズムが不鮮明になってしまいますので注意してください。この「小さなスカシ2個ずつ」は、基本的に左手で2度、非常に軽く打ちますが、次の音がスカシの場合は、右左の打ち方で打ちます。

普通のパターン


カンタロウ系(亀崎・大府・知立・豊田など)の太鼓は、笠寺系と違って、フレーズとフレーズの間に大太鼓が入るというコンセプトになっています。そのため、全体としては4小節(16拍)の整数倍になっていても、太鼓の1フレーズの長さは、長くなったり短くなったりすることがあります。

長いパターン


短いパターン


1小節目と2小節目はリズムが固定しており、アドリブを入れるのなら、主にここで入れます。
3小節目は長さが変わる部分で、普通は4拍ですが、2拍にしたり6拍にしたりして、ここで長さを調・゚します。
4小節目は、フレーズの終了を表す部分です。

フレーズとフレーズの間に大太鼓を挟みこむと言っても、フレーズの終わりが来たら大太鼓を打つというのでは、判断が間に合いません。フレーズの最後のアクセント音(つまり4小節目の1拍目)で締太鼓を強く打つことを意識することによって、フレーズの終わりを判断します。その後の大太鼓は、自然と手が流れて動いてゆくという感じにします。3小節目は、フレーズの終わりが来るのをじっと待っている状態で、フレーズの長さによって、2〜6拍と長さを変えるということなのです。

最後の楽譜例を見るとわかるように、御神前はすべてのフレーズが同じ標準パターンですが、出来間地(御神能)は3行目が長いパターンで4行目が短いパターンになっています。一般的には、短いフレーズの次は長いフレーズ、長いフレーズの次は短いフレーズのことが多いですが、必ずしもそうでない場合も多いです。

締太鼓を打つ強さですが、裏拍(2・4拍目)よりも表拍(1・3拍目)の方をやや強く打ちます。表拍は、2小節目3拍目と4小節目1拍目です。

大太鼓も基本的にそうなのですが、フレーズの頭(1小節目1拍目)は強く、フレーズの最後(4小節目3拍目)はやや弱く打ちます。つまり、4小節目は、1拍目の締太鼓の方に強いアクセントがあって、3拍目の大太鼓はその付属品のような感じにするということです。ただ、4小節目の2拍目から笛がある場合は、次のフレーズの頭の大太鼓と同じくらいの強さで打つ人が多いです。


 始まりの部分

一番最初の始まりの部分ですが、8A−(オヒー)の笛の後、締太鼓のX vvを2回、大太鼓の◎ vvを2回打ち、そのあとで1番に入って行きます。締太鼓のX vvは3回打つ地域もあります。下の楽譜は、スカシも入れてあります。最初の部分の最後の大太鼓の手は、R LL R RL です

知立・豊田・大府など大部分の地域では、2つ目の大太鼓をフレーズ最初の大太鼓とみなし、そのまま長いパターンで、続けて打ってゆきます。そのため、始まりから1番へ、太鼓はスムーズに流れてゆきますが、1行目の2小節目だけは太鼓のリズムが本来とは異なっており、全体としては2拍長い方のパターンのような感じになっています。

知立型


亀崎では、最初の部分の太鼓が済んだら、2または4拍を休んで、そのあとから普通に太鼓を始めます。これは、最初の太鼓とメロディ部分の太鼓とは別であるという考えで、1番の最初の大太鼓を省略し、そのあとでメロディ部分のパターンを始めてゆくという考え方です。以下は、御神前の例です。

亀崎型


知立などの一般的な打ち方では、最初の部分から1番にかけてほぼ同じテンポで打ってゆきますが、亀崎の打ち方では、最初の部分の太鼓の後、1行目の1〜2小節はややゆっくりのテンポで打ってゆきます。


 結びの部分



いくつかの例外はありますが、基本的に、2番の終わりの4小節目(つまり最終小節)から上記のような結びのパターンに入ります。例外としては、御神前・神明・神明崩しで2拍早く入り、富佐と松風で2拍遅く入ります。また、神迎えは、結び自体が他と少し違っています。

メロディーもリズムも人や地域で多少違うので、何とも言えませんが、結びに入っても1行目はそのまま同じように続けて打って行きます。パターンは長いパターンでやってください。
結びの2行目は、1行目が終わったところで一呼吸入れて8の音に入りますが、8の音が裏拍であることを意識しながら、大太鼓を2つ続けて打ちます。Aの方が表拍ですので、大太鼓は1つ目よりも2つ目の方を強く打ちます。

結びの2行目3〜4小節目の締太鼓の数は、人によって3〜5回とさまざまです。その後、少し待って笛の8の音を聞いたら、Aに合わせて大太鼓を打ちます。その後ろの締太鼓も、人によって1〜3回とさまざまです。
ただ、いずれにせよ、結び2〜3行目の締太鼓のリズムは、上記の譜とも微妙に違いますので音源を聞いて習得してください。


 アドリブ

アドリブはいろいろありますが、最初から難しいことは考えずに、普通か長いパターンで、以下のものから始めてみましょう。これは、単に1〜2小節の締太鼓の強打を、大太鼓に入れ替えただけです。ただ、短いパターンはややリズムがとりにくいです。
以下のパターンを1〜2行おきに入れれば、十分に見栄えがします。



アドリブは、上達するまでは1〜2小節の部分にとどめて、3〜4小節目はあまり変化させない方が良いと思います。ただ、以下のように3小節目の頭(1拍目)を大太鼓でアクセントを付けることは、メロディーによってはよく行われます。



特に、長いパターンでは、以下のように2小節目で長さを調節することもよく行われます。ただ、いずれも、メロディーラインによっては合わないこともありますので、十分に注意して下さい。



さらに複雑なものはいくらでもありますが、ひとつずつ順を追って習得して行った方が良いでしょう。
以下は、ちょっとしたサンプルです。○は大太鼓の弱打、xは締太鼓の中打です。




 実際の楽譜例

1.御神前



2番の6行目は、他の曲と少し違って、短いパターンになるので注意。


2.御神能 (出来間地)



3行目の4小節目3拍目のように、大太鼓のところに休符ではなく完全に笛がある場合は、弱く打たずに、2つの大太鼓を同じくらい強く打つ。
は、他の曲と少し違って、短いパターンになるので注意。



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