宮流神楽 曲の解説  前の曲へ 次の曲へ 上のページへ トップページへ
宮神楽 / 天狗

いろいろな呼び名
宮神楽 --- 亀崎(現在版、間瀬版)
花かがり --- 知立(幸村版)、大府(北崎版、横根版)、日進(本郷)
お猿 --- 笠寺
天狗 --- 笠寺
岡崎神楽 --- 中根、高針
おかざき --- 中志段味

音源
演奏音源: 宮神楽天狗 練習音源: 宮神楽天狗 

楽譜
宮流系: 宮流神楽練習用楽譜 熱田系: 熱田神楽練習用楽譜

解説
本来、宮神楽とは宮中で行われている御神楽(主に雅楽)を指していますし、あまりにも一般的な名称なので、宮神楽という曲名は、本来のものでは無さそうです。
西三河の宮流神楽地域では、「花かがり」という曲名が一番よく使われていると思います。花かがりは「花篝」と書き、桜の季節の夜に桜の木の下でかがり火を焚いて、夜桜を風趣を添えるためのものです。京都祇園の花篝は特に有名で、春の季語にもなっています。ただ、この曲との関連性はよくわかっていません。ひょっとしたら、花カグラがなまったのかもしれません。

この曲は、三河地方にある宮流以外の流派の神楽でも、吉田流・大和流・朝日流・桜井流などで「間抜け(まぬけ)」または「岡崎(おかざき)」と呼ばれ、よく演奏される曲のようです。ただ、「岡崎女郎衆」という江戸時代の俗謡から派生してきた「岡崎」という曲も三河地方には存在し、神楽として各地で演奏されていますが、別の曲であるので注意が必要です。
中根・高針・志段味などの熱田神楽地域でもこの曲は「岡崎」と呼ばれており、岡崎という名前から考えると、三河の方にあった曲が、熱田神楽・宮流神楽地域に伝わったのかもしれません。

亀崎・知立・大府の宮神楽・花かがりのメロディは、ほぼ宮流神楽の基本的なリズムに沿っており、演奏も簡単で、習い始めた初級者が好んで演奏する曲のひとつです。それに対し、笠寺では、天狗(お猿)という曲を吹けるのは、ある程度上手な人のみという状況です。笠寺の天狗(お猿)という曲は、3行目と5行目が非常に変則リズムになっており、太鼓は通常の神楽の打ち方(笠寺でいう六つ打ちや半間)ではうまく行かず、独特な打ち方が必要です。太鼓が上手な人しか打てないために、演奏機会がごく限られてしまい、普及しないのだと思われます。

また、熱田神楽系では変則リズムなのに、宮流神楽系では基本的なリズムに沿っています。そして、三河地方の各派の神楽の曲は、リズムは変則ではありませんが、メロディは熱田神楽系により近い感じがします。
熱田神楽系で天狗(お猿)・岡崎と呼ばれている曲が変則リズムなのは、俗謡か何かでもともと変則リズムだったのか、リズムが崩れて伝わってきたのかは、よくわかりません。ただ、宮流神楽系が熱田神楽系から分化していった経緯から考えると、宮流神楽のメロディーは後世にリズムを整合させたもののような気がしています。

笠寺保存会およびその関連地域では、最近、この曲を「お猿」と呼んでいることが多いですが、文献的にも、また古老の話でも、昔は笠寺では「天狗」と呼ばれていたようです。ここ20〜30年のうちに、お猿と天狗の2つの曲の名前が入れ違ってしまったようですが、なかなか元には戻らないようです。この入れ違いは、昔は、天狗とお猿の2つの曲がペアになっていて、「天狗の表」と「天狗の裏」(どちらが表・裏なのか不明)とも呼んでいたことがあったらしく、それと関係しているのかもしれません。笠寺系でも一部の保存会は正しい名称、つまりこの曲を天狗と呼んでいます。


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