|
昔の名人である、亀崎の船橋政一氏と日進・知立の幸村元一氏は、兄弟弟子だったはずなのに、幸村元一氏はこの曲を吹いてはいなかったようです。その師匠(コンドウエンジロウ氏)が吹いていなかったのかもしれません。亀崎の間瀬版楽譜(昭和44年)に載っていて、知立の幸村版楽譜(昭和56年)に載っていない3曲(稲荷・若山・浦坂)のうちのひとつです。
亀崎の稲荷は、曲の1番最初の部分の指使いが八-2-3と下の手から始まりますが、笠寺のお天道は5-5と上の手から始まります。大府では、古い音源や長谷川版楽譜(昭和53年)では、笠寺と同じように上の手から始まりますが、最近の音源では亀崎と同じように下の手で始まっており、途中で亀崎から何らかの影響を受けたのかもしれません。
笠寺では、現在この曲はお天道(おてんとう)と呼ばれていますが、文献的には「天道神楽」「天登神楽」「天燈神楽」「燈道神楽」などの文字もあり、どれが本来なのかはっきりしません。
また、笠寺では「お天道の裏」という曲もありますが、この曲との関連性もはっきりしません。なお、お天道の裏は、亀崎の梵天返し(=知立の下がり葉)に相当します。
曲は4行しかなく、演奏は比較的簡単ですので、笠寺系では、七間町とともに初心者が最初に習う曲のひとつです。亀崎の稲荷は、笛は簡単ですが、1行目が通常よりも2拍多いので、太鼓の方は、出だしに注意が必要です。 |