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この曲は、亀崎の現在版ではきちんと牡丹という曲として載っていますが、間瀬版(昭和44年)では、曲名としては花神楽のページに載っているものの、花神楽の一部であるとして楽譜自体は別に扱われてはいません。また、幸村版(知立)では、亀崎の花神楽と同じである稲荷という曲は載っていますが、この牡丹に相当する曲は載っていません。
ということで、亀崎・知立では、以前は、ひとつの曲というよりも、花神楽(知立の稲荷)の一部としてとらえられていたようです。ですが、もちろん曲の成り立ちを考えれば、牡丹の相当する曲が先にあったのだと思われます。亀崎の花神楽(知立の稲荷)と呼ばれる曲は、この牡丹を少しずつアレンジしたものを2番と3番としてつないだ、一種の牡丹の変奏曲のようなもので、三段返しとも呼ばれています。
笠寺では、初級者でも良く知っている非常にポピュラーな曲です。この曲は全部で6行あり、亀崎・大府では一番と二番の両方とも6行吹きますが、笠寺・中根では、一番は6行で二番は5行と、二番の6行目は省略します。
笠寺保存会では、現在この曲は「天狗」と呼ばれていますが、文献的にも、また古老の話でも、昔は笠寺では「お猿」と呼ばれていたようです。ここ20〜30年のうちに、天狗とお猿の曲の名前が入れ違ってしまったようですが、ちょっと元には戻らないようです。この入れ違いは、昔は、天狗とお猿の2つの曲がペアになっていて、「天狗の表」と「天狗の裏」(どちらが表・裏なのか不明)とも呼んでいたことと関係しているようです。
笠寺系でも、一部の保存会ではもともとの名称のお猿と呼ばれていますし、中根でも「猿返し」、中志段味でも「さる」、春日井上八田でも「さる吹き」と呼ばれています。
この曲のメロディの特徴は、4行目の部分が明らかなシンコペーションになっているところで、昔の人も結構良いリズム感をしていたのだなと感心します。 |