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この曲は、亀崎・知立以外で神楽として吹かれているところは、今のところ見当たらないです。
神楽以外では、有松西町の山車囃子のひとつである「ぼんてんばやし」とまったくといって良いほど同じです。有松西町では、他に十日恵比寿・竹雀・六方など俗謡系の曲を山車囃子として使っていますので、山車囃子としてのぼんてんばやしも俗謡のひとつかもしれません。
熱田神楽系の地域では、盆殿神楽、ぼんてんばやしと呼ばれている曲がありますが、これらは亀崎の御神能・知立の出来間地に相当する曲で、違う曲です。
亀崎の夏祭りに使われる曲の中に「ぼんてん」という曲があり、これはほとんど梵天裏と同じ曲ですが、俗謡のひとつになっています。神楽の梵天は7行ありますが、梵天裏は4行だけで、梵天裏の1・2行目は梵天の4・5行目、梵天裏の3・4行目は梵天の2・3行目に相当します。
亀崎では「梵天」を「ぼんてん」と発音していますが、知立では「ぼんでん」と発音されており、「ぼんでん」が正しいと思われます。民俗学者の大家、柳田國男によれば「ぼんでん」とは「秀でること」を表した古語「ぼで」が訛ったもので、神様が降臨する祭場を示すために樹木や竿に御幣などを飾りつけた依代(よりしろ)のことを意味するそうです。具体的には、「竹で編んだカゴを、色彩豊かな布・錦で飾り付けたもの」や、「長い棒や竹の先端に幣束を何本か取付けたもの」を指します。梵天祭りは秋田県で行われている祭りですが、梵天(ぼんでん)を飾ることは、全国的に行われています。梵天という漢字は、修験者の影響からぼんでんにこの漢字が当てられたようです。
なお、亀崎の楽譜では、現在版には載っているのですが、間瀬版には載っていません。亀崎では、かなり以前から吹かれていたらしいのですが、間瀬版が成立した昭和44年には、神楽としてまだ十分に認知されていなかったのかもしれません。
ところで、この梵天の最初の1行目は、出来町河水車の帰り囃子の1行目、つまり周衛の2行目や笹波の1行目など似ている気もしますが、その後の部分は関連性が無さそうです。他人の空似でしょうか。 |