宮流神楽 曲の解説  前の曲へ 次の曲へ 上のページへ トップページへ
矢車 / 矢車

いろいろな呼び名
矢車 --- 亀崎(現在版、間瀬版)、知立(幸村版)、大府(北崎版、横根版)、笠寺、中根

音源
演奏音源: 矢車矢車 練習音源: 矢車矢車

楽譜
宮流系: 宮流神楽練習用楽譜 熱田系: 熱田神楽練習用楽譜

解説
笠寺資料では、「平将門の乱(933〜940年)が東国で起こったとき、朝廷からその討伐命令が出され、全国各地で乱の鎮圧と平安を祈願する儀式が行われた。尾張国の吾湯市の人々も、熱田大宮・高蔵宮・八劔宮・大福田宮・日割宮・氷上宮・源太夫宮の七ヵ所の神々の分霊を受け、西南の小高い山に祠を建て、神楽を演奏して将門の討伐を祈願した。このときに演奏されたのが、「矢車」という曲だった。」と伝えられています。ただ、七所神社の創建にまつわる話はきっとそうだろうと思うのですが、唐突に矢車の話が出てくるところは、かなり眉唾だと思われます。

この矢車という曲は全部で19行あり、かなり長い曲です。笠寺だけは最後に1〜2行目を繰り返して終わるので、21行となっていますが、明らかに笠寺系と思われる中根を含め、他はすべて19行でお終いになっています。笠寺系のメロディは亀崎・知立・大府と微妙には違いますが、基本的な部分はほとんど同じです。

この19行の部分で曲の構成を考えてゆくと、A(a+b)+B(a+c)+C(d+d')+D(b)のような形になっています。Aの部分は、曲の冒頭の2行+4行で一段楽します。Bの部分は、冒頭の2行を繰り返した後、矢車に特徴的な7-8-7-6の音形を伴った高音部(特に9行目と11行目)が続きます。Cの部分は、後半に緩んだ感じのフレーズ(13行目と15行目)を持つ2つのフレーズ(12〜13行目と14〜15行目)があり、緩んだ方のフレーズ(13行目と15行目)は全く同じものです。Dの部分は、最初の方の3〜6行目を繰り返してお終いですが、笠寺だけはD(b+a)のように冒頭の2行が最後にくっついています。

笠寺の新車(津賀田神社の山車の道行に使われていた曲)の途中に出てくる矢車部分は、この矢車のBとCの部分、つまり7〜15行目にあたります。

笠寺の矢車は、高音の部分で矢車に特徴的な7-8-7-6の音形が出て来なくて6や7だけになっていますが、笠寺の新車の矢車部分も、笠寺系と思われる中根の矢車も、ちゃんと7-8-7-6の音形が出てくるので、笠寺のものが変化してしまったものなのでしょう。

亀崎には、東組(宮本車)・石橋組(青龍車)・中切組(力神車)・田中組(神楽車)・西組(花王車)の5つの組があり、それぞれ特定の宮流神楽の曲と深い関係があります。このうち、中切組が矢車で、力神車の打ち囃子も矢車を編曲したものとなっています。


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