宮流神楽 曲の解説  前の曲へ 次の曲へ 上のページへ トップページへ
月矢 / 月矢車

いろいろな呼び名
月矢 --- 亀崎(現在版、間瀬版)
月矢車 --- 知立(幸村版)、笠寺、中根、高針
月夜神楽 --- 大府(北崎版、横根版)
月上車 --- 春日井(上八田)

音源
演奏音源: 月矢月矢車 練習音源: 月矢月矢車

楽譜
宮流系: 宮流神楽練習用楽譜 熱田系: 熱田神楽練習用楽譜

解説
笠寺資料では、「景行天皇が、紀元783年8月に熱田の宮へ行幸された時、熱田と松垢島の土民は神楽を以って、天皇の旅情をお慰めをした。月矢車は、その時に演奏された曲である。」と記載されていますが、まずこれは後世の作り話でしょう。

熱田大山祭の文献では、付合車・突合車という字があてられ、他の町の山車と出会ったときに吹く曲だったとの記載がありますが、定かではありません。ただ、笠寺資料では、月矢車ではなく月合車という字が当てられています。(現在は、笠寺では一般的に月矢車(つきやぐるま)と呼ばれています)
それ以外にも、各地域で、月夜神楽とか月上車とか、さまざまな呼び名や文字が使われています。月矢車にしても、矢車という曲との関連性ははっきりしませんし、少なくともメロディ的には全く関係なさそうです。

神明は天照大神(太陽の神)を指しており、お天道も「おてんとさま」と太陽信仰を表しています。古代神話ではイザナギの左目からアマテラス、右目からツクヨミが生まれたとされ、ツクヨミ(月読命、月夜見尊)は、月の神様、つまり暦を司る神様として農耕神の重要なポジションを占めています。ひょっとしたら、この月矢(月矢車)の昔の名前は、神明と対になる曲として、例えば月夜見神楽のようなツクヨミ(月読命、月夜見尊)に関連する名前だったのかもしれません。

各地域で微妙にメロディは異なるのですが、基本的にそれほど大きな差はありません。ただ、亀崎・幸村元一氏(知立)・高井錦一氏(知立八橋)・長谷川佐一氏(大府)では、1行目が通常より2拍少ない14拍になっているのに対し、笠寺・中根・高針郷では、きちんと16拍あります。

この月矢車という曲は全部で12行ですが、本来2回繰り返して演奏するものなので合計24行となり、非常に長い曲のひとつです。ちなみに、神明は中助無しで23行、中助ありで34行、新車は表+裏で19行、矢車は19行(笠寺は21行)、神明の裏は19行(笠寺は27行)です。巫女舞があるときは、知立では1番だけでお終いにします。

曲の構成を見ると、A(4行)+B(3行)+C(5行)の3つに分かれます。Aの部分では、1行目と2行目が少し違うだけでほとんど同じメロディ、3行目と4行目も少し違うだけでほとんど同じメロディで、いずれも5の音を基調に使っており、やや強めのフレーズです。Bの部分は、やや緩んだ感じのフレーズで、5・6・7行目は皆よく似たフレーズになっています。Cの部分は、8〜9行目と10〜12行目に分かれ、8行目と10行目は5の音から始まり、やや強い感じがありますが、その後はやや緩みます。12行目は、10行目と後半部分はまったく同じです。

亀崎には、東組(宮本車)・石橋組(青龍車)・中切組(力神車)・田中組(神楽車)・西組(花王車)の5つの組があり、それぞれ特定の宮流神楽の曲と深い関係があります。このうち、石橋組が月矢車で、力神車の打ち囃子も月矢車を編曲したものとなっています。


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