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            十日恵比寿は十日戎・十日夷とも書きますが、江戸時代に流行した俗謡(はやり歌)のひとつです。祭り囃子としては関西を中心に全国的な広がりを持っており、名古屋市内でも緑区の大高や中川区の戸田など、多くの地域で行列のお囃子として使われています。 
             
            えびす様は平安時代末期に市場の守り神として祀られ始め、室町時代以降は商売繁盛の神様として、庶民の信仰を集めるようになりました。 
            大阪の今宮戎神社では、江戸時代初期から十日戎(毎年1月10日)というお祭りがあり、大勢の人で賑わいます。信者は拝殿で笹と吉兆(縁起物でその内容は1番の歌詞を参照)を受け取り、吉兆を笹に付けて家路につくわけですが、この十日恵比寿の唄は、そのときの情景を歌ったものです。 
             
            宮流神楽は、古来の神楽以外に、山車囃子や俗謡などの曲を編曲し、取り入れてきました。この十日恵比寿も、笠寺系の地域では、神楽ではなくてお囃子として演奏されているのですが、亀崎では宮流神楽の一部として取り入れられているようです。亀崎の間瀬版楽譜には載っていないので、取り入れたのは比較的最近のことかもしれません。 
             
            全部で5行ありますが、笠寺のお囃子のものと比べると、亀崎の神楽のものは3行目の真ん中と5行目の最初のところが少しだけ違います。ただ、お囃子の十日恵比寿も、人や地域によって微妙な違いがいろいろあり、どれが正しい本来のメロディなのかはよくわかりません。 
             
            歌の歌詞 (2番以降は、亀崎夏祭りの唄のしおりから引用しましたが、たぶん後世のものでしょう) 
            1番: 
            
        
          
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            十日恵比寿(とおかえびす)の売り物は、 
                  煎袋(はぜぶくろ)に取鉢、銭叺(ぜにかます)、 
                  小判に金箱、立烏帽子、 
                  湯出蓮(ゆではす)、才槌、束ね熨斗(たばねのし)、 
                  お笹をかたげて千鳥足 | 
           
        
       
            2番: 
            
        
          
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            手拍子揃(そろ)えて、華やかに、 
                  舞の手に合わす締太鼓、 
                  誰しも見に行く花の山、 
                  チラと見染めし幕の内、 
                  その花かついで、エッサッサ | 
           
        
       
            3番: 
            
        
          
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            さてもお山の身の果ては、 
                  内海屋か岡島屋か、鴻の池、 
                  受け出す、そのまま奥様と、 
                  いうたらよかろか、そりゃならぬ、 
                  やっぱり、廓(くるわ)をぬりきらぬ | 
           
        
       
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