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この曲は、亀崎や知立では名前の通り、神楽の一番終わりの最後に吹く曲です。そのためか、なかなか練習の機会が少なく、覚えるのも最後になってしまいがちです。
曲を聴くと、他の神楽の曲とは全く違った雰囲気でテンポも非常に遅く、太鼓もアクセントや大太鼓の位置は同じですが打ち方は全然違っています。亀崎では、他の神楽と吹き出しは同じですが、幸村元一氏は、この曲だけの20秒以上かかる非常に長いフレーズの吹き出しを吹いています。
太鼓に関しては、スカシが無くてシンプルで、テンポも遅いのですが、基本的なリズム、つまり締太鼓を強く打つところは他の宮流神楽と全く同じです。また、現在の亀崎の吹き方では、止メに入ると急にテンポが普通の曲と同じくらいに速くなるのですが、幸村元一氏の音源では、止メの部分もそれまでと同じようにゆっくり吹きます。
神迎え/おかめのページに書きましたが、笠寺のおかめ(=神迎え)には一社という同じようなフレーズを持った能管の曲があり、笠寺ではその曲を神楽の一番最初に、つまり神迎え用の曲として吹きます。現在、笠寺にはおかめの裏という、この亀崎の神納めに相当する曲がありますが、笠寺では神納め用の意味はありませんし、それに相当する能管の曲もありません。
この神納めは、曲の雰囲気から考えて明らかに能管の曲から派生したものと思われるのですが、笠寺にはそのような曲は見当たりません。しかし、おそらく過去には、笠寺にはおかめの裏に相当する、能管で演奏される神納め用の曲が存在し、そこからこの亀崎系の神納めの曲が出来たのではないかと考えています。
笠寺の一社という能管の曲は、最初に笛の独奏によるゆっくりした部分(出し)があり、それに続いておかめに相当する中くらいのテンポの部分(恵比寿)があり、最後に速いテンポの部分(蛇)があって、明らかに能で言う序破急(Wikipediaのページ参照)に沿った構成になっています。
この神納めは、幸村元一氏の吹き方で見ると、最初に笛の独奏によるゆっくりした部分(吹き出し)があり、普通の神楽に比べれば遅いテンポのおかめの裏に相当する部分があります。最後は普通の神楽と少し違う一社の蛇に似たメロディになっており、一応、序破急の構成になっています。ただ、最後の部分は、元となった能管の曲では、一社の蛇の部分のような独自の結びがあったのかもしれません。
この曲はあまり頻繁に演奏されないせいか、亀崎では、曲の間の取り方が人によって違うように見えます。間瀬版と現在版では少し違いが見られ、船橋政一氏はいずれともまた少し違うようです。曲の構成から考えると、幸村元一氏の吹き方がおそらくもともとのオリジナルに最も近いと思われ、亀崎で吹かれているものは、ややメロディとリズムがくずれているような気がします。
亀崎の現在版の楽譜(間瀬版にはありません)には、神おろしという曲が載っていますが、この神納めと基本的には同じ曲にあたります。ただ、神おろしは笠寺のおかめの裏とほとんど同じ曲で、この神納めとは別ルート、おそらく大府経由で伝わったものではないかと考えています。 |